関連会社間の不動産売買 ― 「身内取引」だからこそ価格の合理性が問われる
関連会社間で不動産を売買する場面は、事業再編や資金戦略、資産管理の見直しなど、経営上の合理的な目的に基づくものがほとんどです。しかし税務の世界では、「身内同士の取引」ほど厳しく見られるという側面があります。
そのキーワードが 「時価」 です。
■ 税務上の大原則は「時価取引」
法人税法22条では、資産の譲渡は原則として「時価」で行われたものとして計算されます。
関連会社間で著しく低い価格・高い価格で売買した場合、以下のようなリスクが生じます。
● 売却価格が低すぎる → 寄附金認定(損金不算入)
● 売却価格が高すぎる → 受贈益課税
● 同族会社間は特に厳格にチェックされやすい
「固定資産税評価額だから妥当」
「路線価ベースだから問題ない」
という説明は、法人税上の“時価”の説明としては十分とはいえません。
税務調査では必ずこう問われます。
なぜ、この価格なのですか?
この問いに対して、客観的・合理的に説明できる準備があるかどうかが、実務上の分かれ目になります。
■ 価格決定の難しさ
関連会社間取引では、次のような事情が絡み合います。
● 収益物件で利回り評価が必要
● 老朽化建物の取り扱い
● 将来再開発の可能性
● 特殊用途不動産(工場・倉庫など)
● 一体利用している複数筆の土地
こうしたケースでは、「近隣の取引事例」だけでは説明が難しいことも少なくありません。
また、経営判断として妥当であっても、税務上の“合理的価格”とは別問題である点も重要です。
■ そこで重要になる「不動産鑑定評価書」
不動産鑑定士による鑑定評価書は、単なる価格意見書ではありません。
それは、
● 取引事例比較法
● 収益還元法
● 原価法
などの複数手法を用い、専門的・体系的に導かれた客観的時価の根拠資料です。
関連会社間売買において、鑑定評価書は次のような役割を果たします。
① 税務調査への備え
価格算定プロセスを第三者が裏付けていることは、極めて強い説明材料になります。
② 取締役の善管注意義務の観点
価格決定過程の合理性を示す資料として活用できます。
③ 金融機関への説明資料
グループ内再編や資産移動の正当性を補強します。
④ 少数株主対策
恣意的価格設定ではないことの客観的証明になります。
■ 「問題が起きてから」では遅い
税務否認があった場合、
● 追徴課税
● 延滞税
● 加算税
● グループ全体の信用低下
といった影響が広がります。
しかし実務では、
「身内取引だから簡易に決めてしまう」
ケースも少なくありません。
価格は“結果”ではなく、“プロセス”が重要です。
■ まとめ
関連会社間の不動産売買では、
● 時価取引が原則
● 価格乖離は寄附金認定リスク
● 固定資産税評価額や簿価は必ずしも時価ではない
● 説明可能性が最重要
そして、その説明可能性を担保する最も有効な手段が
不動産鑑定評価書の活用です。
経営判断を守るためにも、
「価格を決めてから相談する」のではなく、
価格を決める前に専門家を関与させることが、結果的に最も合理的な選択となります。

