令和7年 佐賀県の基準地価を不動産鑑定士が解説
佐賀県の最新の基準地価(令和7年・2025年)を、不動産鑑定士の視点からわかりやすく解説します。佐賀での相続・担保評価・地代や賃料の増減額交渉・底地・借地のご相談など、不動産鑑定は地域事情に精通した専門家へご相談ください。
1.全体観
県全体のトーンは、住宅地が緩やかな上昇を持続し、商業地は中心部の回復が明確化、工業地は物流適地の需要集積によって高い伸びを示したという三層構造です。住宅地の前年比は+1.3%と上昇幅を維持し、商業地は+2.2%と中心市街地の再評価が寄与しました。工業地は+7.6%と突出しており、特に基山や鳥栖など主要結節点周辺の伸びが顕著です。地価の上昇は単一要因ではなく、高速道路網の結節性、スマートIC整備による時間距離の短縮、生活利便性の再評価といった複数の要因が重なり合って生じています。
2.指標の位置づけ(基準地価・公示地価・路線価)
基準地価は毎年7月1日時点の価格を都道府県が評価するもので、中期トレンドの把握に向きます。公示地価は1月1日時点の国の指標で、民間取引の相場観に結びつきやすい性格を持ちます。相続税路線価は課税実務の基準で、一般に公示地価の約8割を目安にされますが、地点ごとの個別性により乖離は小さくありません。実務では三指標を水平に参照しつつ、接道条件、形状・奥行、地勢、用途規制、収益性といった個別要因を重ね合わせて総合判断することが重要です。
3.数値の要点(令和7年・佐賀県)
● 用途別・対前年平均変動率(基準地価, 基準日:2025年7月1日)
住宅地 +1.3%(4年連続上昇)、商業地 +2.2%(4年連続上昇)、工業地 +7.6%(9年連続上昇)である。
● 調査地点と上昇・横ばいの内訳
調査地点は220地点。継続地点(林地除く213地点)の対前年変動率は、上昇:住宅地56・宅地見込地1・商業地33・工業地11、横ばい:住宅地22・商業地13・工業地2で、上昇地点は前年より2地点増である。
● 最高価格地点
住宅地の最高価格は佐賀市赤松町 100,000円/㎡(12年連続)。商業地の最高価格は佐賀市駅前中央1丁目 330,000円/㎡(32年連続)である。
● 上昇率上位地点(ポイント)
工業地では東部エリアの上昇が顕著で、基山町小倉(基山9-1)+24.2%(全国5位)、鳥栖市藤木町(鳥栖9-1)+20.0%(全国9位)が挙がる。背景として広域物流拠点性(鳥栖JCT周辺)や小郡鳥栖南スマートIC(2024年6月開通)による時間距離短縮が寄与している。
● 商業地の個別トピック
佐賀市天神2丁目は+16.2%と上昇率が高く、中心商業地の回復を示す。
● 参考(公示地価の概況)
佐賀県の公示地価(2025年1月1日)は平均40,890円/㎡(前年比+2.3%)で、緩やかな上昇基調を裏付ける。※指標が異なるため、基準地価との単純比較はしない。
4.上昇の背景—需要・アクセス・希少性
最大のドライバーは広域物流需要の継続です。九州自動車道・長崎自動車道・大分自動車道が結節する鳥栖JCT周辺は、九州全域を俯瞰した配送拠点としての合理性が高く、倉庫・工場系の立地意向が厚みを増しています。加えて、小郡鳥栖南スマートICなどの整備により時間距離が短縮され、近隣県境エリアの居住選好や通勤圏も拡張しています。供給面では用途適合地の希少性が際立ち、開発可能な大区画の確保が難しいエリアでは希少性プレミアムが価格に上乗せされやすい状況です。
5.空間的な偏り—二つの軸で捉える
第一の軸は「広域物流軸」で、鳥栖・基山周辺に代表されるIC/JCT近接地が県全体の工業地相場を牽引しています。第二の軸は「都市中心軸」で、佐賀市中心部の商業地が、業務・商業・居住機能の近接性により底堅さを保っています。この二軸は相互に独立ではなく、居住・就業・物流の関係が循環的に強化されることで価格の安定性に寄与しています。
6.価格形成の分解—賃料と利回り
不動産価格は大づかみに言えば「期待純収益(賃料から費用を控除した額)を期待利回りで割り引いた結果」として把握できます。近年の上昇は、工業・物流系での実需に支えられた賃料上振れの寄与が大きく、空室率の低位安定が価格を押し上げています。一方で、金利やリスクプレミアムの環境は利回りに直結し、調達環境の引き締まりは価格の下押し要因になり得ます。同じ上昇でも「賃料主導」と「利回り低下主導」では持続性が異なるため、評価の場面では要因分解を通じた妥当性検証が欠かせません。
7.地代・賃料の増減額評価はお任せください(佐賀の専門家)
近年の地価上昇に伴い、地代・賃料の増額請求や減額交渉に関するご相談が、貸主・借主の双方から増えています。当社は、地代・賃料増減に係る評価を多数手掛けており、不動産鑑定評価基準や判例動向、地域の賃料実務に基づき、公正・中立な結論を丁寧にご説明します。個別事情(契約条件、修繕負担、原状回復、更新状況など)を踏まえ、交渉資料としても使えるレポートをご提供します。
8.佐賀の不動産鑑定のご相談
相続・担保評価・賃料改定・底地・借地・工場・倉庫・物流用地の評価など、佐賀県内全域に迅速に対応いたします。まずはお気軽にお問い合わせください。


