遺留分侵害請求と不動産鑑定

はじめに

近年、福岡市・福岡県全域、そして佐賀県でも地価が上昇基調です。これに関連して、遺産分割における不動産の取り扱いが難しくなり、遺留分侵害請求(旧:遺留分減殺請求)に関するご相談が明らかに増えていると感じます。

遺留分の争点は「いくらを、どの基準で、どの時点で評価するか」に集約されます。不動産は遺産の中でも金額が大きく、分割方法や居住・賃貸の実態により評価が大きく変動します。鑑定評価の質は当然として、弁護士・税理士・司法書士など各士業との連携、そして利害の異なる当事者間を円滑に進める調整力が極めて重要です。


遺留分侵害請求で不動産が争点になりやすい理由

● 相続税評価と時価の乖離:路線価等と市場時価の差が広がる局面では調整が必要になります。

● 利用実態の相違:被相続人や相続人が居住・事業用に使っていたか、賃貸か、自用かで評価アプローチが変わります。

● 権利関係の複雑さ:借地権・底地、共有持分、私道負担、再建築不可、市街化調整区域、配偶者居住権など。

● 地域特性:福岡都市圏・北部九州のミクロ相場は、地価公示・基準地価だけでは読み切れない局所的な上げ下げが見られ、事例選択の巧拙が結果を左右します。


鑑定評価で押さえるべき実務ポイント

1. 評価時点の明確化
侵害額の算定は評価時点の設定で結果が変わります。贈与(生前贈与)・相続開始・訴訟提起・和解協議など、どの時点を採るかを法的主張と整合させます。

2. 最有効使用の吟味
現況・法規制(用途地域、建蔽率・容積率、都市計画、文化財・景観・農地規制等)を前提に、現実的な最有効使用を検討します。

3. 適切な手法選択と併用
取引事例比較法・収益還元法・原価法を地域の実情に即して併用し、整合チェック(売買事例の妥当性、賃料水平、利回りレンジ、再調達原価の検証)を行います。

4. 事例の精査
「徒歩分数・前面道路幅員・角地性・眺望・騒音・斜面・液状化・洪水・土砂災害・埋蔵文化財包蔵地・インフラ計画」等の補正項目を数値根拠とともに整理します。

5. 権利・利用上の留意
共有・底地・借地、賃貸中の明渡し可能性、原状回復・残置物、長期修繕・耐震、建築基準法適合性など、換価容易性に影響する要因を反映します。

6. 説明責任と再現性
結果だけでなく、プロセスと根拠の透明性が紛争解決の鍵です。依頼する鑑定士によって結果が異なり得るのは、事例選択や補正、手法配分、法的主張との整合に差が出るためです。


弁護士等との連携と、不動産鑑定士に求められる調整力

遺留分侵害請求は法的論点・税務論点・登記実務が交錯します。鑑定士は当事者間・専門家間の論点を翻訳し、一本化する“ハブ”の役割を果たします。評価の合理性を土台に、落としどころ(和解解決金のレンジ)を具体化しやすくします。

● 弁護士:主張立証計画・評価時点・評価対象の画定・和解方針との整合

● 税理士:贈与時評価・相続税申告是正・譲渡税見込・二次相続影響

● 司法書士:持分移転・登記、表示変更や地積訂正の可否

● 測量士・土地家屋調査士:筆界・境界確定、分筆・地積更正

● 建築士:違反是正、耐震・用途変更の技術的評価


当社の強み

● 数十億円クラスの遺留分侵害請求を複数回担当:高額・多物件・多権利が絡む案件での評価設計と資料統合力に強み。

● 福岡・佐賀の地場相場に精通:ミクロ立地の上げ下げや物流・工業・商業・住宅のサブマーケットを横断的に把握。

● 弁護士・税理士ほか士業ネットワーク:評価から解決スキームまでワンストップで支援。

● 調停委員としての実務経験:手続の肌感や合意形成の勘所を踏まえ、和解可能性を高める評価書作り・説明対応が可能。

● 工場用地・底地・借地・収益不動産にも対応:特殊案件で差が出る前提整理と手法選択。


ご依頼の流れ

● 初回相談(無料の範囲を明確化):争点整理、想定時点、対象物件、必要資料の確認。

→相談は無料でございますので、お気軽にご相談ください。

● 見積・スケジュール提示:評価範囲・手法・想定成果物を明記。

● 資料収集・現地確認:登記・公図・測量図・建築図・レントロール等。

● ドラフト説明:反論可能性・感度分析(事例入替・利回り幅・賃料シナリオ)。

● 最終報告書:裁判所・調停・任意交渉いずれにも提出可能な体裁で納品。

● 交渉・調停・訴訟のサポート(必要に応じて弁護士と連携)。


よくあるご質問(FAQ)

Q1. 相続税評価(路線価)と鑑定評価はどちらを使いますか?

A. 手続目的により異なります。遺留分侵害額の算定では“時価”の立証が問われる場面が多く、鑑定評価で合理的に説明することが有効です。


Q2. 鑑定結果はどの程度ブレますか?

A. 事例選択・補正の考え方・評価時点の取り方等で差が生じます。プロセスの透明性と再現性を重視する鑑定士を選ぶことが重要です。


Q3. 賃貸中・再建築不可・共有・底地など特殊物件でも対応可能ですか?

A. 可能です。換価容易性・利用制約・権利調整コストを丁寧に織り込みます。


Q4. 納期はどのくらいですか?

A. 物件数・権利関係・必要資料の整備状況で変動します。お急ぎ案件は段階納品(先に概算レンジ→最終報告)もご提案します。


依頼時にご用意いただきたい主な資料

登記事項証明書、公図・地積測量図、建築確認・図面、賃貸借契約書・レントロール、固定資産税課税明細、過去の売買・評価資料、写真、各種同意書等。資料が不足していても、当社で取得・補完いたします。


まとめ

地価上昇局面の福岡・佐賀では、遺留分侵害請求における不動産評価の重要度が一段と高まっています。鑑定評価の出来+士業連携+調整力が解決スピードと合意の質を左右します。当社は数十億円規模の案件実績と調停委員としての経験を活かし、実務で「使える」評価をご提供します。まずはお気軽にご相談ください。


【免責事項】本コラムは一般的情報の提供を目的としており、個別案件に対する法的助言・税務助言ではありません。具体的なご相談は弁護士・税理士等の各専門家と連携のうえで承ります。