【租特法40条・寄付】隣接する社会福祉法人への不動産贈与に伴う鑑定評価(福岡県大牟田市/農振除外地・無道路地)

弁護士 税理士・公認会計士 司法書士・行政書士 個人・地主 相続・遺産分割・親族間トラブル 税務(会計)対策・法人化・同族間売買

案件の概要

  • 依頼目的: 個人から社会福祉法人への不動産寄付(贈与)に伴う、租税特別措置法第40条の非課税承認申請のための時価評価
  • 対象物件: 現況は畑(農振除外地・宅地見込地)、かつ無道路地
  • 所在地: 福岡県大牟田市
  • ご依頼者様: 個人オーナー様(司法書士の先生からのご紹介)

【Before】ご依頼の背景と直面していた課題

「タダで寄付するのに、税金がかかる? さらに鑑定評価も必要と言われて……」

ご依頼者様(個人)は、所有している福岡県大牟田市の土地を、隣接して施設を構える社会福祉法人へ寄付(贈与)したいとお考えでした。

手続きを依頼された司法書士の先生からご相談を受けた際、対象の不動産と税務面において、2つの非常に高いハードルがあることが分かりました。

1. 対象不動産の評価が極めて困難(無道路地・農振除外地)

対象地は現況こそ「畑」でしたが、農業振興地域内の農用地区域(通称:青地)から外された「農振除外地(通称:白地)」であり、将来的に建物を建てられる「宅地見込地」としてのポテンシャルを秘めていました。しかし同時に、建築基準法上の道路に接していない「無道路地」でもありました。このような複雑な要因が絡み合う不動産は、路線価や固定資産税評価額では適正な価値を導き出すことができません。

2. 税務署への「厳密な時価証明」が必須

個人から法人へ不動産を寄付する場合、税務上は複雑な処理が求められます。依頼者様は「タダであげるのだから税金もかからないだろう」と思われていましたが、実は特例(後述の租特法40条)の承認を得なければ、寄付した個人に対して多額の所得税が課されてしまうリスクがありました。その承認を得るためには、税務署に対して「適正な時価」を客観的に証明する必要があったのです。

【Action】不動産鑑定士のアプローチと専門的見地

私たちは、物理的な不動産の特性と、税務上の要件の両面から慎重に評価アプローチを構築しました。

1. 「宅地見込地」かつ「無道路地」としての精緻な評価

現況の畑としての低い価値ではなく、農振除外地であることを踏まえ、将来宅地化される期待価値(宅地見込地)をベースに評価しました。その上で、無道路地であることの制約(道路を開設するための費用や、建築不可による減価)を適切に減価修正し、極めて精緻な現在価値を導き出しました。

2. 隣接地特有の「限定価格(併合価値)」の判定

今回は「隣接する社会福祉法人」への寄付です。無道路地であっても、隣接する法人の土地とくっつく(併合される)ことで、道路付けが解消されて一体的な利用が可能になり、不動産の価値が跳ね上がる場合があります。この特殊な価値(限定価格)をどこまで反映させるかについて、税務署の審査に耐えうる論理的な評価書を作成しました。

【After】結果とご依頼者様のメリット

「無事に非課税の承認が下り、社会福祉法人にも喜んでもらえました!」

当社の作成した不動産鑑定評価書をエビデンスとして、司法書士・税理士の先生方と連携して国税庁へ申請を行った結果、税務署からの否認や指摘を受けることなく、無事に「非課税の特例(租特法40条)」の承認を得ることができました。

依頼者様は多額の税負担を回避して社会貢献(寄付)を実現でき、「最初はなぜ鑑定が必要なのか分からなかったが、適正に評価してもらえて本当に助かった」と、大変感謝していただくことができました。

【専門家コラム】なぜ、無償の寄付(贈与)に不動産鑑定が必要なのか?

今回の事例のように、「個人から法人(社会福祉法人など)へ不動産を無償で寄付・贈与する」場合、なぜわざわざ費用をかけて不動産鑑定評価が必要になるのでしょうか?

それには、以下の通り「贈与者(個人)」と「受贈者(法人)」の双方における、厳格な税務・会計上の理由があります。

1. 個人(贈与者)側の事情:「みなし譲渡所得税」の回避

個人から法人へ不動産を寄付すると、税法上は「時価で売却して得た利益を寄付した」とみなされ、寄付した側の個人に「みなし譲渡所得税(所得税)」が課税されてしまいます。(※贈与税ではありません)。

相手が社会福祉法人等の場合、国税庁長官の承認を受ければこの税金を「非課税」にする特例(租税特別措置法第40条)が使えます。 しかし、この特例申請には「寄付財産の適正な時価を明らかにする書類」として、不動産鑑定評価書などの提出が事実上必須となっています。 「どうせ非課税になるなら鑑定は不要では?」と思われがちですが、そもそも「非課税にしてもらうための審査(関門)を通過するための必須アイテム」として鑑定評価書が不可欠なのです。

2. リスク管理:万が一、非課税承認が取り消された場合

租特法40条の非課税特例は、「寄付から原則2年以内に社会福祉事業に供すること」等の厳しい要件があります。万が一、法人の都合で要件を満たせず承認が取り消された場合、寄付した個人に対して即座に多額の税金が課されます。その際の課税基準となる「当時の時価」を事前に鑑定で確定させておくことは、依頼者(個人)を守る重要なリスク管理策となります。

3. 社会福祉法人(受贈者)側の事情:厳格な会計基準と行政への報告

社会福祉法人は原則として税金(法人税等)はかかりませんが、極めて厳格な会計ルールが存在します。 社会福祉法人会計基準に基づき、もらった不動産は「受贈時の公正な評価額(時価)」で会計帳簿(固定資産)に計上し、所轄庁(都道府県や市区町村)へ報告・開示しなければなりません。 「隣の方から大体〇〇円くらいでもらいました」という曖昧な処理は許されず、行政監査や理事会での承認に耐えうる客観的なエビデンス(鑑定評価書)が強く求められます。

【士業の皆様・不動産オーナー様へ】

法人間の取引や、公益法人等への寄付・現物出資など、「税務署への説明責任」や「行政への報告義務」が生じる不動産移動においては、路線価等を用いた自己判断は極めて危険です。

税務トラブルを未然に防ぐためにも、不動産の「適正な時価」の証明は、国家資格者である不動産鑑定士にぜひお任せください。